健康-Dataと対処法

日々の健康を経験から綴っています

原因不明の頭痛に対して考慮すべき肩こり自覚症状鈍化からの影響

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以前に勤めていた会社の同僚が、突然、強烈な頭痛にみまわれ、本人や家族はくも膜下出血だと心配し病院に駆け込みました。

 

しかし、検査をしても脳に異常はなく、病院を数カ所渡り歩いて検査をした結果、最後に言われたのが「肩こりです。」だったそうです。

 

この同僚は、慢性頭痛はありましたが、普段はあまり肩こりを自覚していませんでした。しかし、肩は触るとカチカチに固い肩でした。

 

このような頭痛は、肩こりによる「緊張型頭痛」(緊張性頭痛と覚えている人も多い)とか、「肩こり頭痛」とか「筋収縮性頭痛」と言われています。

 

急性にせよ慢性にせよ、頭痛と肩こりの関係を結びつける証拠も多く、研究も進んでいますが、そのメカニズムは完全に解明されていません。

 

しかし、必要なのは、エビデンスではなく対処方法であり、慢性的な頭痛を予防し、起きたとしても軽く済むように対処しておくことだと思います。

 

そのために、少し見直してみて頂きたいことがあります。

あなたの肩こりに対する自覚症状の、過去から現在までの変化です。

そこに、あなたの頭痛を緩和し予防する大きなヒントが隠されています。

 

 

首・肩の緊張が頭痛の本当の原因か?

肩こりによる筋肉の緊張によって、その周囲の神経が刺激され痛みを誘発するという緊張型頭痛ですが、なぜ、首や肩に痛みが出るのではなく、不快な頭痛になって、頭部に痛みが起きるのでしょうか?

 

頭が痛いのなら、頭に原因がなくては理屈が通らないです。

しかし、頭部を検査しても頭痛の原因が特定されない場合、身体的ストレスと精神的ストレスによる緊張型頭痛と言われます。

 

なんとなく、それで納得させられている感じがありますが、とても違和感があります。

 

肩こりと頭痛がセットになって起きていると感じている人は、実際に多いと思うのですが、本当に辛い慢性頭痛に苦しんでいる人に話をよく聞いてみると、頭痛が発症する以前よりも肩こりの自覚症状が薄れていると言う人が多いです。

 

頭痛のように強い痛みがあれば、肩こりの辛さを気にしている余裕がないと言う人もいますが、頭痛のない時に以前のように肩こりを感じているかというと、そうでもなく、自覚症状が鈍化しています。

 

ここに、緊張型頭痛が起きる本当の理由と、その対処法のヒントがあると思うのです。

 

関連痛という言葉を聞いたことがありますか?

参考文献はこちら

体のある場所で感じられた痛みは、必ずしもその場所に問題があることを意味しません。痛みは、本来の場所とは別の場所で感じられることがあるからです。たとえば心臓発作による痛みは、腕から来ているように感じられることがあります。これは心臓と腕からの感覚情報が、脊髄の同じ神経経路に集まるからです。

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出展 痛みの基礎知識: 痛み: メルクマニュアル

 

関連痛とは、痛みのある場所と問題のある部位が、必ずしも一致しないことで、体のいくつかの場所からの信号が、脊髄と脳の同じ神経経路を通っていることがあるために起こります。

 

痛みとは、体が何らかの損傷を受けると、痛みの受容体に感知され、電気インパルスとして痛みの信号になり発信されます。

その痛みの信号が、問題のある場所ではなく、同じ神経経路上で、痛みを認知しやすい場所で感じることがあるのです。

 

肩こりに起因する痛みならば、本来問題になっている場所は、あくまでも肩周辺です。

 

それが、肩ではなく頭痛として慢性的に起こるのであれば、まず一番に疑うべきは、肩周辺の痛みの受容体が肩に起こった問題を感知していない可能性ではないでしょうか?

 

 

肩こりの自覚症状の鈍化

肩こりは、デスクワークや生活習慣により、長時間にわたり繰り返しストレスを受け続けている状態で、辛くとも仕事ならば容易に避けることも出来ないものです。

 

このような状態の時に起こる生体反応として、内因性オピオイドによる鎮痛作用が働きます。

 

生き物は通常、身の危険やストレスに晒されるとそれを回避しようとしますが、人は、仕事中に肩が凝ったからといってその作業を回避しているわけにはいきません。

 

肩が凝るのは、それなりの身体的・精神的ストレスに晒されているわけですから、それを長期間・長時間にわたって繰り返し受け続けていれば、その苦痛を抑えようとすることは当然の反応です。

 

新社会人や転職などで仕事か変わって、急にデスクワークをやるようになったり、強いストレスを感じ始めた時、当初は肩が痛いほど凝っていたのに、時間とともに慣れてきて慢性化していった経験ありませんか?

 

もしくは、自分では全く自覚していなくても、同僚や友人に肩を揉まれた時、カチカチだねと言われたことありませんか?

 

肩が凝る環境がなくならなければ、肩こりを起こしている場所の損傷はなくなることはありません。

それが、慣れてしまったとか自覚症状がないのは、肩周辺に起こっている損傷を、肩周辺の痛みの受容体で感知されにくくなったということです。

 

つまり、緊張型頭痛とは、その時に急に肩こりがひどくなったことで突発的に起こるものではなく、肩こりの自覚症状が鈍化したことによって対処されずに残ってしまった、元々の辛い肩こり症状の上に、さらに強い負荷がかかったことで、関連痛として頭部で認知される痛みではないかと思うのです。

 

 

恒常性維持機能(ホメオスタシス)と感覚の順応

人の体は健康を保つために、環境の変化やウイルスなどの侵入等に対して、体内環境をある程度一定に保つ働きがあります。

これを生体の恒常性維持機構(ホメオスタシス)といいます。

 

気圧や気温の変化や食事による血糖値の変化に対しても、この働きのおかげで、血圧や体温や血糖値が調整されます。

ケガや病気になった時にも、この働きによって自然治癒していきます。

 

肩こりも同じように生体の恒常性により常に修復され続けているはずですが、もし肩こりを起こす環境が長期間・長時間にわたって続き、ある一定以上の回復は、もはや出来ない状態であったら、肩こりの感覚は、その「ある一定以上の回復が出来ない状態」に順応してしまうのではないでしょうか。

 

つまり、肩こりとして首から肩への損傷や炎症が、ある一定以上は処理されず、完全に修復されない状態で恒常化し、残ってしまっているにもかかわらず認知されない状況が出来てしまうということです。

 

 

検査困難な筋肉の状態

慢性頭痛の中で最も多いと言われる緊張型頭痛ですが、その原因として、身体的ストレスや精神的ストレスにより血行が悪くなり、首・肩・頭の筋肉が緊張して頭痛が起きるとされています。

 

その対処法として、温める、首のストレッチをする、姿勢を正す、などが言われていますが、それで慢性的な頭痛が治まるでしょうか。

 

本当に、肩周辺の筋肉の状態が、どれほど緊張しているのかは検査困難です。MRI検査でも筋肉も神経も写りませんし、検査のしようがありません。

 

 その上、頭痛がひどくて病院に行く人は、辛い頭痛の痛みは訴えますが、同時に肩こりが辛いとは言いません。

検査した結果、他に異常がない場合に医師の方から、肩こりなどによる緊張型頭痛ですね、と言われ、鎮痛剤と筋肉を柔らかくする薬(筋弛緩剤)を処方される場合がほとんどだと思います。

 

その人の肩こりの状態、筋肉の状態が、どのくらいきついのか?

そこまでの診断や検査をすることはないのではないでしょうか。

 

 一過性の筋肉の緊張が原因ではなく、その過緊張の元となっている、恒常化した肩周辺の筋肉の損傷が治癒されなければ、筋弛緩剤で筋肉を柔らかくしても意味はないです。

 

そこで、筋弛緩剤と鎮痛剤で効果がなければ、精神科の領分へと移され、抗うつ剤を処方されたりします。

 

 度重なる長期間の鎮痛剤の服用の末、痛みが収まらずに、精神科へ回されることへの抵抗も、患者さん側には強いのではないでしょうか?

 

 

頭痛治療の選択

肩こり頭痛が、肩こりから始まった痛みの信号が慢性化したものなのか、それとも筋肉的な損傷からくる痛みが伝播しているのか、この判断と診断や検査が不十分なことが、頭痛治療に対する患者さんの選択肢が分かれ、迷い彷徨う理由のような気がします。

 

選択肢は3つあります。

  • 鎮痛剤及び抗うつ剤の服用によって、あくまでも他に異常部位がなく、脳が感じている痛みに対して対処していく方法
  • 痛みを発している体側の原因究明と筋肉への対処によって、頭痛にならない体に回復させる方法
  • 治療は受けず、市販の鎮痛剤でしのぐか痛みを我慢する

 

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出典 慢性痛治療の実態

   journal of orthopaedic science

 

このグラフのように、慢性的な痛みの治療には、病院や診療所に行く人と、民間療法へ行く人が見事に半々に分かれています。

 

そして、なにもしないという人が半数以上いるというのが現状です。

なにもしないという人達は、市販の鎮痛剤で間に合わせていたり、我慢しているということです。

 

 

慢性頭痛ならば、もう一度徹底的に肩こりの治療を

慢性的に頭痛が起きる人の大多数は病院や民間療法にも行かず、市販の頭痛薬でしのいでいたり我慢している人です。

 

市販の頭痛薬がまだ効く人や、我慢ができる人は、多少の頭痛があってもいつものことだとして、それで済ませてしまいます。

 

そして、肩こりは多少感じてはいても、たまにはマッサージに行く人もいるかもしれませんが、わざわざ専門医や鍼灸の治療院に行くことは稀ではないでしょうか。

 

頭痛がもっとひどくなり、市販の頭痛薬ではもはや効かなくなるくらいになると、病院で診察を受け、原因がなく緊張型頭痛と診断されれば、処方された鎮痛剤を服用しはじめます。

 

頭痛もそこまで強く、そして頻繁になると、肩こりをかまっている意識はなくなり、なんとかして頭痛の痛みをなくすことしか考えなくなります。

 

肩こり頭痛と言って、実際に鎮痛剤や頭痛薬は飲んでも、本当に肩こりのケアを徹底的にやっている人は少ないのです。

 

その理由が

  • 実際に痛むところを鎮めるのが先
  • 頭痛さえ治まれば、肩こりまでかまっている暇はない
  • 肩こりの自覚症状は、あまり感じていない

というところにあるのではないでしょうか。

 

長期間・長時間にわたって、繰り返し繰り返し受け続けている身体的ストレスや精神的ストレスによって慢性化した肩こりは、修復が不完全なまま残ります。

 

自分の肩こりの自覚症状が、その肩こりを感じ始めた頃とくらべて、薄れているにもかかわらず、慢性的に頭痛があるならば、今一度徹底的な肩こり治療と肩こり対策をすることを強くおすすめします。 

 

 

まとめ

頭痛の治療を受けて鎮痛剤を服用していても慢性的に起き続ける頭痛ならば、そして緊張型頭痛という診断を受けているのならば、その痛みの大元が修復しきれていない肩こりにある場合があります。

 

その場合、肩をマッサージして揉みほぐしたり、温めたり、首・肩のストレッチをするくらいでは根本的に改善はしないでしょう。

逆に、重度に慢性化して硬質化した肩の筋肉を、いきなり揉んだり温めて血流をよくしようとすると、詰まって流れが悪いところに無理矢理血液を流そうとすることになり、それでも流れは急に良くならないため、他の血管に圧が強くかかることで、血管拡張による頭痛につながったりします。

 

肩を揉むだけしか出来ないマッサージのお店ではなく、肩こりに対する治療がしっかりと出来る、肩こり外来や鍼灸マッサージ師を選んで、もう一度徹底的に肩こり治療を受けてみてください。

 

自分の肩こりの自覚症状が鈍くなっていることで、肩こり治療に専念出来なかったことが、今の頭痛に繋がっていることを考慮に入れて、肩こり対策と治療を見直してみることが結果的に頭痛からの解放に繋がっていきます。